2016年7月22日。僕の54歳の誕生日に、Tokyo Tomato Cafeがオープンしました。場所はミャンマーの旧都で、いまでもビジネスの中心地である最大都市ヤンゴンのレイダンという、大学や専門学校、語学学校がたくさんある東京で言えば、渋谷・原宿・代々木によく似た若者が多いエリアに、新しくオープンしたショッピングモールのレストラン街の一角です。
広さは120m2。約70席のお店です。提供しているメニューはオムライス、ナポリタン、チキン南蛮、東京カレー、餃子などです。目指しているイメージは、食事が美味しい昔ながらの喫茶店。雑誌や漫画を読みながら、ゆっくりコーヒーの香りを楽しむ、気のおけない友達や職場の同僚、恋人との会話が弾む、そんなお店にしていきたいと思っています。
オープンはもうバタバタでした。毎月、現場に足を運び、建設状況をチェックしていましたが、僕の見立てでは「早くて秋のオープン、クリスマスに間に合うといいな」という感じでしたが、6月に、ショッピングセンターのオーナーから「来月にオープンするからね」と言われたときはびっくりしました。ミャンマーでは、「ソフトオープン」と称して、建設工事の途中でも強引に開業することがあると聞いていたものの、雨季の最中、やっと建物の壁が出来たばかりで、床にはたくさんの雨水が溜まっている状態で来月オープンすると言われてもにわかに信じ難く、急遽行ったオープニングスタッフの採用面接では「来月オープン予定だけど、もしかしたら、来年になるかも?」と冗談のようなオリエンをする羽目になりましたが、にっこり笑って「はい、わかりました」とそんな無茶苦茶な採用条件を承諾してくれたスタッフの屈託のない笑顔に、またまた驚かされました。
翌月、一応、ユニフォーム的なロゴ入りエプロンだけは準備したものの、半信半疑でヤンゴンを訪れると、本当にオープンする気配。あわてて、2月にバンコクで購入し、ヤンゴンの倉庫に預けておいたテーブルや棚を引っ張り出して、スタッフ総出で組み立て開始。床掃除から始めて、1週間でオープン準備を完了しました。内定していたホールスタッフの女の子が1ヶ月の間に結婚してしまい、代わりに、別の子が勝手に来てたり(急場なので即採用)、1年前から一緒に準備をしてきたキッチンマネージャーの2人がオープン前日に失踪したり(当日中に戻ってきました)、「これは何の罰ゲーム?」と思うようなことの連続でした。その後も、笑えるような(笑うしかない)罰ゲームは続きましたが、なんとか、新年を迎えることができました。
初めてミャンマーの地に立ったのが2012年3月30日。その時は、この国に知り合いも友人もゼロ。たった一人でした。それから実に5年近くの月日が経ちました。いまではたくさんの友人もできましたし、びっくりするくらいたくさんのミャンマー人が「変な日本人」として僕のことを認知しています。これまでは、あくまで旅行者の一人に過ぎませんでしたが、お店がオープンして、この国との関わり方が大きく変わりました。同時に、いままで見えなかったいろいろな側面や不思議な慣習にも接するようになりました。この辺のことは1月1日から隔週日曜日に中国新聞SELECTの紙面で連載するコラムに書いていく予定です。
創業15周年を機に、「いままでと違うビジネスを、違う場所で」をテーマに、開始した「ビルマのなにごと?」プロジェクトですが、気がつけば、運営には取材を通じて教えてもらったTPS(トヨタ生産方式)を導入し、ポスターやチラシ、屋外ビジョンの動画を作成したり、クーポンや販促キャンペーンの企画など、いままでやってきたコミュニケーション・サポートビジネスの集大成のようなことになっています。違うのは、クライアントが自分自身ということ。また、ヤンゴンという場所を選んだことについては、自分も含めて納得できるような明確な理由はありませんでしたが、「ここで間違いなかった」という確信だけはあります。
昨年、歴史的な政権交代があり、長年苦しんできた経済制裁も解除され、いまミャンマーは大きく変わろうとしています。変革期ならではの混乱や意思ある踊り場ならではの課題、愉快な苦労がたくさんあります。機会があれば、ぜひ、ヤンゴンにお越しください。
2017年 元日
代表取締役 宮崎秀敏
◎Tokyo Tomato Cafe
<Address>
4th floor Hledan GMP shopping Mall, San Yeik Nyine, No.96/108, Yangon Insein Road. No.(2) ward, Kama Yut Township, Yangon Region, Myanmar
<HP>
https://www.facebook.com/tokyotomatocafe/